灰色カビ病にご注意を
毎年多くの小売店様から寄せられる胡蝶蘭の疑問などをまとめておきます。
今回は「店の胡蝶蘭にシミがぁぁぁあああ!」と毎年数件の小売店様より
絶望を交えた絶叫の電話がかかってくる「灰色カビ」についてです。
■ 灰色カビ病 症状
多くの植物に発生する灰色カビですが、胡蝶蘭も例外ではありません。灰色カビが発生すると花の表面にグレーのシミがいくつも広がっていき著しく観賞価値を損ないます。 また花もちも極端に悪くなります。
灰色カビに侵された花びら
花びら全体に症状がみられる様子
上記の写真は当園の販売先のお花屋さんから「一晩で胡蝶蘭にシミがでた!」という相談をうけて当園で引き取って調べさせていただいた際のものです。
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■ 原因 湿度の高い状態でボトリチスという菌が花びらに発生することが原因です。
最初はいくつかの小さな点シミが数えられる程度ですが、それはすでに灰色カビに侵されいる証拠です。 時間と共に徐々にシミは広く、深く、多く、病状は進行していきすぐに観賞価値を失います。
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■ 店頭での発生時期と失敗の原因
”店頭での”発生時期は春先と秋に多くみられます。
なぜこの時期が多いのか? 灰色カビは部屋の湿度が100%近くなると発生します。 基本的には除湿効果のある機材(暖房機やクーラー)が動いていればまず湿度が100%になることはありません。
しかし春先と秋はクーラーと暖房機の両方を使わずに済むため、下で説明するような多湿になる原因(加湿器や散水など)があると部屋の湿度が100%になることがあります。もちろん梅雨時など湿度の高い季節にも発生することがあります。
■失敗の原因について
□加湿器が原因の場合
冬の時期は乾燥をさけるために加湿器をまわしている販売店も多いと思います。しかし徐々に暖かくなり”暖房機が停止しているにも関らず加湿器を停止しない”と多湿状態となり灰色カビが発生します。 必ず暖房機と加湿器はセットで動かしてください。 冬場の乾燥対策は春先には必要ありません。
失敗例 お店を閉める際は暖房機と加湿器が動いていた。しかし夜間にサーモでうごく暖房機は止まったが、加湿器は運転を続けていた。
□散水が原因の場合
加湿器ほどではありませんが、花びらへの過剰な霧吹き、湿度を維持するための床への散水、夜間になってからの水やりも多湿の原因となります。 とくに夕方から床への散水は本当に必要なのか? よくお確かめください。
□梅雨時や雨の多い季節 梅雨時など湿度の高い季節にも発生することがあります。過剰な水撒きに注意し、ときどきお店の空気を換気してください。
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■まとめ
こうならないためにも(笑) 小売店の皆様には、季節ごとの管理に気をつけながら鮮度の良い胡蝶蘭の販売をお願いしたいところです。
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■余談ですが、生産者の現場では
今では原因も解明され対策も確立して大きな被害になることはなくなった灰色カビですが、昔は原因が分からず春から梅雨時と秋に大きな被害を受けた事が何度もありました。なにせ胡蝶蘭の営利生産そのものが未開拓の領域であったため、病害虫に関しては自分で身をもって体験し対処法を確立していくしかありませんでした。
朝ハウスに行ってみると温室の全ての胡蝶蘭がシミだらけになった時の絶望といったら(笑)、この世の終わりに思えたほどです。そして慌てて薬による防除を行うも効果が上がらず、それどころか薬害で灰色カビ病以上の大打撃を受けたこともあります。泣きっ面にハチとはまさにこのことです。
現在、栽培温室には除湿機が完備しています。設定湿度以上になったとき運転して空中湿度をとります。約500㎡の温室では2.2Kwの除湿機で一晩に30から50Lの水分を取ってくれます。もう除湿機なしの生活なんて考えられらない! |